
美容室の設計、最初に考えるべき「動線」の話
少し前、美容室の設計打合せで初めてオーナー様と顔を合わせた時のこと。
ご挨拶を終えるとすぐに、
「このあたりがカットスペースかな」「シャンプーはこっちに持ってきたいんです」
…などと自然にレイアウトやデザインの話が始まりました。
特に資料があるわけでもなく、会話だけで感覚的に空間の構成が見えてくる。
相手も現場経験が豊富なプロなので、やり取りがとてもスムーズでした。
そしてその時、不意に思い出したのが――自分がこの仕事に就いたばかりの頃のこと。
「設計を始めたばかりの自分には“動線”すら分からなかった」
当時の自分は美容室に必要な機能も設備も知らず、図面もまともに描けない状態でした。
そもそも平面図を見ても、それが何を示しているのかも理解できていなかったと思います。(笑)
そんなある日、師匠にこんなことを言われました。
「お客様側とスタッフ側、それぞれの“動線”を考えてみれば、必要なものが見えてくるよ」
言われた瞬間は「…いや、それが難しいんやって」と思っていたのですが(苦笑)、
今振り返るとこの言葉がとても大事な“設計の視点”だったのだと思います。
「動線」から考える美容室設計
その時に下の図のように説明されたのを覚えています。(メモしていたノートは紛失、、)
この図のように、「お客様がどう動くか」「スタッフがどこを通ってどう作業するか」
そういった視点で空間を区切っていくと、必要な機能が自然と浮かび上がってきます。
最初は複雑に思えても、要素を分解してみると意外とシンプルに整理できたり。
忘れてはいけない「収納」と「居場所」
美容室設計で意外と見落とされがちなのが、「使っていない時の道具の居場所」です。
例えば、、、、ローラーボウルはどこに置く?
ワゴンは使わない時、どこに収納する?
お客様の手荷物やコートを置くスペースは?
こういった所も設計段階で考えておかないと、スタイリッシュに仕上げた空間もごちゃっとなって台無しに…。
設計の仕事は「忘れ物をしない」こと
意匠デザインや素材選び、レイアウト構成は、みんなが注目する部分です。
でもそれ以上に設計者が気をつけるべきなのは、使う人が「しまった」とならないように先回りすること。
設計段階での“忘れ物”をなくすことこそが、設計者の仕事だと思います。
そしてそれは、動線をイメージしておくことで、かなりの部分が解決できると考えています。
最後に
今回の打合せを通して、自分が自然と“動線”を意識して話をしていたことに
この年になって気付き、何だかうれしかったです。(笑)
設計者として、忘れずに大切にしていきたい視点だと改めて感じました。
「動線を考えること=その空間で働く人、訪れる人の動きを想像すること」
美容室に限らず、どんな空間にも言える設計の基本かもしれません。
【過去の美容室デザイン実績】